頭痛と精神疾患

頭痛は一般的な症状、疾患であり、頭痛を経験した事のない人は世の中にほとんどいないと思います。しかし、治療する立場から見ても極めて「奥の深い」疾患です。

「脳神経』クリニックであり、HPでも「頭痛外来」を掲げている当院には、毎日のように頭痛を主訴に受診される方がいらっしゃいます。その患者さんの中に、頭痛が酷くで寝込んでしまったり転げ回る程の痛みで来院したという方は多くはありません。そういう方の多くは、大きな病院の救急外来を受診するようです。
比較的強い頭痛があったとしても、診療所を受診する患者さんの中に「命の危険のある頭痛」の代表である「くも膜下出血」の患者さんはほとんどいません。開院後1年と1ヶ月少しが経ちましたが、これまでに「くも膜下出血」を真剣に疑って診察、検査をした患者さんは数える程しかいませんし、本当に「くも膜下出血」の方は1名しかいませんでした。

 慢性ながら進行性の頭痛である「脳腫瘍」による頭痛を訴えて来院した患者さんも2名程しかいません。MRIで脳腫瘍が見つかった患者さんは結構いるのですが、ほとんどの方は「頭痛の精査のためにMRIを撮ってみたところ、たまたま発見された」というレベルの方です。

 似たような状態に「慢性硬膜下血腫」があります。次第に血腫が増えて脳を圧迫するので、徐々に進行性の症状を呈しますが、これも「頭痛」が主訴で来院して診断が付いた方は2名しか記憶にありません。「物忘れ」とか「ふらつき」などの主訴で、外傷の既往もはっきりしないのですが、MRIを撮ってみたら血腫があったという患者さんも結構多いようです。


頭痛の原因として何らかの病気を脳の中(正しくは頭蓋の中)に発見することは決して稀ではありませんが、毎日のように診ている頭痛の患者さんのほとんど(印象として90%以上)は頭蓋内には何も異常を見いだすことはありません。
要するに、緊張型頭痛、偏頭痛、その両者の混合性がほとんどです。

そしてそれらの頭痛は、相反する特徴を持ちながらも共通する部分もあります。
それは、患者さんの多くが、精神的に緊張しやすい、ストレスを溜め込みやすい、リラックスする術を体得していない、などです。そして、家族の心配事、仕事上の不安、自分の健康に関する不安などから、何らかの悩みを抱え不眠傾向にある方も少なくありません。

特に、偏頭痛の患者さんは、偏頭痛体質ともいうべき素因、素質がある傾向にあり、どちらかといえば(必ずしもではありません)痩せ型で、神経質そうな表情、態度を持つ印象があります。中には本当に精神疾患として治療した方が良いと考えられる、神経症、心身症的な方もいらっしゃいます。比較的インテリジェンスの高い人の多い偏頭痛患者さんの中には、粘着気質の人や自分勝手な方も少なくありません。医者が気に入らないとすぐ他に変わる、自分の望む薬がもらえないと他の医者に行く、痛み止めが欲しいのにもらえないと来なくなる、そして意外に不真面目で医師の指示に従った服薬をしない人も少なくありません。医学的知識はないけれど自分なりの信念のようなものがあるので医者の言う事を聞かない傾向の人もいます。
残念ながら、経験上、そういう人たちは頭痛に悩み続ける傾向にあります。
良くなる人たちは、やはり医師の指示に従いきちんと治療をする人たちがほとんどです。

性格的に、精神的に問題のありそうな人でも、いえ、そういう方だからこそ、専門医による神経学的診察で脳、脊髄系に明らかな脱落症状がない事、MRIで脳内、頭蓋内に明らかな病気がない事をきちんと示してあげる事は大切だと考えています。

「脳に病気はないんだから痛み止めを飲んで寝ていなさい!」

という「家庭の医学」のような診断治療ではなく、

「診察とMRIの結果、あなたの脳には病気はない。心配ない頭痛だから安心して下さい。」

という(精神的なサポート、安心感を与える)のが大切だと思います。
頭痛にすぐ痛み止めを処方するのではなく、抗不安薬や向精神薬、睡眠導入剤などを適切に選択して投与することも必要だと思いますが、MRIによる診断で異常がないということを知ってもらう事、それにより自分の頭痛が心配なものではない(脳卒中ではない、脳腫瘍などはない)ということを納得してもらう事は、それらのお薬を投与するのと同じ位、場合によってはそれ以上に頭痛を和らげる効果があることを実感しています。

脳に病気のない頭痛の患者さんの中には、精神的に病んだ人が少なくないと言う事をこれからも肝に銘じて診療を行って行こうと思います。

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